
3、4年ほど前、閉店してしまったがよく通っていた喫茶店にはテレビが設置されていて、そこで昼ご飯を食べて、タバコを吸って、コーヒーを飲みながら、ふとテレビをみると、なぜか「ドキュメント72時間」というNHKの番組が流れている事が多かった。ちょうど自分の昼時間のルーティンと放送時間枠が被っていたのだろう。この番組は、取材班が特定の場所に入って、丸3日間=72時間、そこに来る人達にマイクを向けていくという至ってシンプルな内容で、代わる代わる飾らない人々が映し出されるリアルな距離感が良い。また、運営している側を一人も出さず、居合わせた人達だけに語らせるのも、その場所を尊ぶ気持ちを感じられる。昼間の煙たい喫茶店で、不意に涙腺が緩んで、やばい、、ってなった時もある。あと、72時間の取材中に良い巡り合わせがなかったのか、パッとしない回もあったりするのも良い。たしか2年前の年末だったか、テレビを付けたら、たまたまドキュメント72時間の総集編特番をやっていた。視聴者の人気投票ランキング形式で過去回が放送されていて、もちろんどの回も最高だったが、喫茶店で観た時ほどの心の揺れはなかった。この喫茶店にも、店員さんやお客さん達の各個人的なドキュメントが刻まれていて、この空間、この時間、この隙間にしか生まれない何かがあったからなのかもしれない。自分も、場所を作ったり運営していく仕事をしているが、それを誇りに思わせてくれた番組。これからも、お客さんに必要とされたり、お客さんを必要とする、リアルな場所を続けていきたいなと思う。