
インテリアは触れることもできる。しかし、空間の記憶に深く残るのは、案外、目に見えない気配の方だったりする。
火を灯せば、静かに立ち上る煙が空気にゆっくりと広がり、場の輪郭が少しずつ変わっていく。例えば、甘さとスモーキーさが溶け合ったような、深くて落ち着く香り。
家具が空間に重みを与えるなら、香りは形がないからこそ、触れられないからこそ、心に残りやすいのかもしれない。
その儚さが、空間に静かな余白を残す。誰かに見せるためではなく、香りが形づくるのは感情の輪郭。ひとすじの煙が視線を残していく。
写真はNAG CHAMPAというお香。インドの寺院で使われていたという説もある香りで、Supremeの店舗でも採用されているらしい。甘く、ややスモーキーで、少しスパイスが混じったような独特の匂いがする。