
3年ほど前、友人のすすめで歯医者に通院するようになった。初診で虫歯が見つかって、それを治すところから通い始めたが、虫歯が治った後も定期的に通うようになった。正しい歯磨きの方法や日々のケアを教えてもらったり、歯も毎回きれいにメンテナンスしてくれる。ツルツルになった歯で街を歩くのは気持ち良くて、まるで散髪をした後のような爽快感がある。以前友人に「歯茎の神経は脳と繋がってるから、しっかり洗わないと脳も健康になれない」と言われたことがあるが、たしかに「歯茎をマッサージするように磨いてください」と歯医者の人も言っていた。歯磨きの爽快感には、菌や汚れを落とす以上の意味があるのかもしれない。待合室には、英語の文字がデザインされたカッコいい絵が飾られていて、それを眺めるのも一つの楽しみだった。ある日「それ、私が描いたんです」と、受付の方が声をかけてくれた。カリグラフィーの作品らしく、展覧会の案内状までいただいたが予定が合わず観に行けなかったことが今でも少し心残りだ。小さな歯医者なので、院長さんや助手さんとの距離も近く、限られた時間の中での会話も楽しい。歯の検診が目的なのに、通院そのものがセラピーになっているような気もする。しかし、この歯医者にも最近は行けていない。歯のことだけでなく、自分の身の回りのことすら後回しにししてしまうほど忙しい状態になってしまっているのは不健康だなと思う。久しぶりに予約を取って、あの絵を眺めて、会話を楽しんで、歯をきれいにしてもらいに行こうかな。