
過去イチ難しいお題でした。この歳になると、本を贈るということが「思想を表明する」とニアリーイコールの行為になってしまい、同世代の友人に贈るっていうのもちょっと大袈裟になっちゃうというか。こういう面白い本あったよーの報告じゃなくて、物理的に贈るとなると、お、重い。かといって、極力自分の思想を表に出さないように配慮しつつ、相手の嗜好性を想像して「こういうの好きそう」で選ぶと、それはそれで年齢的にもう持ってるよみたいなことにもなりそうですし。あるいは若い友人に贈るとなれば「新たな世界の扉を開くきっかけとなるように」みたいなメッセージが滲んでしまい、別の意味(老害的な意味です)で重い。考えすぎなのかもしれないけど、本を贈るって、結構気を使うものなんだなぁと思ってしまいました。贈るのが自著ですと「最近こんなことやらせてもらってます」みたいな、暑中見舞いや年賀状感覚になって気楽ですが、それだと面白くないし。
ということで捻り出したのは、大好きなベルギーのメイクアップアーティスト、インゲ・グロニャール(とパートナーの写真家ロナルド・ストゥープス)の写真集です。インゲのクリエイションは「美しいってなんだ?」を問うものだと私は思っており、マルジェラやドリス、ヴェロニクブランキーノ、ラフシモンズ、AF ヴァンデヴォースト等、当時のアントワープに共通する独特のムードが「美とは多様なものである」ということを、圧倒的なビジュアルとともに語りかけてくれるわけです。これを美容の編集に携わる同世代の友人に贈って、一緒に眺めながら夜通し美容談義したいな!と思った次第。贈らなくても、飲みの席に持参すれば事足りるという話もありますけど、まあそこはお許しを。美容って何か、メイクアップって何か、スタイルって何か?みたいな話を、美味しいお酒を片手に延々とできたら嬉しいなと思います。