
私にとって最も大切な小説のひとつ。
10代半ばならではの人との絶妙な距離感や、定義しづらい関係性を描いていて、学生の頃にこの作品と出会えていたら、きっと心の友となってくれて、もう少し生きやすかっただろうと感じる。
久しぶりに手に取ってみると、この作品にはやはり不思議な温度がある。
言葉のひとつひとつに息遣いがあり、熱くも冷たくもないのに、生き物と触れているような確かな熱を帯びている。
そして、華やかではない青春を味わった者にしか分からない独特の香りを感じる。
そんな私にとって特別なこの小説を、大好きな友人が何かに行き詰まった際にそっと贈りたい。
似たような青春を味わった彼女の心が少しでも軽くなることを願って。