
この本は、母が日本から送ってくれたものでした。母も同じ時期に読んでいたそうです。20代前半でネザーランドダンスシアターに入団して間もない頃、海外ツアーの旅に持っていきました。はっきり覚えているのは、ツアー先の国の公園で、休憩中ひとりベンチに座りページを開いた光景です。
私は仲間と賑やかな時間を過ごすのも好きですが、一人で過ごす時間も大切にしてきました。ただキャリアの始まりの頃は、漠然とした将来への不安や、取り残されてしまうような心細さに襲われることもありました。そんな時『極上の孤独』に出会い、「孤独は寂しさではなく、贅沢な時間であり、自分を成長させてくれるもの」と知りました。その気づきは大きな支えとなり、アーティストとしても、人としても、私を豊かに育ててくれたのだと思います。
30代になった今、周りの友人たちはキャリアの転換期を迎えたり、母になったり、新しい生活を始めたりと、それぞれの変化を経験しています。近況を分かち合う中で、漠然とした孤独や将来への不安を抱えている姿に触れることもあります。それは私自身も時折感じる感覚です。だからこそ、あの頃の自分を支えてくれたこの本を、今度は友達への「応援」として贈りたい。そして同時に、私自身もまた読み返してみようかな。