
人生で一度もそのことを考えずに人生を終えても別に何の支障もないけど?という案件は多い。
花粉症の人は一生で何回くしゃみするのだろう?そしてくしゃみのエネルギーを集めて風力発電はできないのか?とか。
貧乏ゆすりをする人は一生で何回振動するのだろう?そしてその振動を集めて美顔器を作ることはできないのか?とか。
そんなどうでもいいことのひとつに、セミコロンについて考えることがある。
漢字と平仮名とカタカナの日本語文化圏には、ほとんど関係ない記号である。
セミコロンと打つと「為巫女論」という意味不明な当て字になってしまうほど、日本人には縁がない。
セ・ミコ・ロン。ce mico l’on?フランス語か?いやもちろん「;」のことである。セミコロンは上にピリオド、下にコンマで構成されている記号である。
機能的にもピリオドとコンマの間にあり、なんの役にたつのか学術的にも存在意義の薄い中途半端なアイツのことだ。
この本は、そんなセミコロンが歴史の波間に大きく揺れる、激動の歴史をドラマチックに追いかける。
ある時はちやほやもてはやされ、ある時は冷たく断罪される。
セミコロンなんて基本的には使わなくても英文は完成してきたし、
今後もこの世にセミコロンなんてなくても、人は生きていける。
しかしこの本を読むと、実は軽やかで多少チャラくてリズムカルな憎めないヤツに思えてくる。大きな仕事をするわけでもなく、会社ではいてもいなくてもいい。だけど一緒に飲み屋にいるとその場が楽しくなる。皆が笑顔になる。でも飲みすぎるとちょっとウザい。
そんな自覚のあるあなたに、この本を贈ります。
『セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』
ちなみに昨今は「tl;dv」という AI 議事録ツールがあり、too long, didn’t view の略であるという。長すぎる会議なんてイヤだー!という現代人の気持ちを代弁する AI のお言葉。この場所でセミコロンは堂々と自分のお仕事を遂行しているのだった。