小ぶりで華奢なジュエリーが似合う女性になりたかった。ベージュもしくはグレイのハイゲージの薄手ニットと合わせて。リップとアイシャドウは薄いピンクで、手入れの行き届いたブラウンの髪の毛は柔らかなふんわりパーマ。細い金属チェーンでハートのペンダントトップのネックレスは、もちろん母から娘へのプレゼント。
すべて妄想だ。
今の私はどうだ。髪の毛は気がつけばずっとショートで、赤かったり金髪だったり。日本で一番ベージュの服が似合わない女と言われてもおかしくないだろう。アクセサリーといえば、気がつけば大ぶりのものばかり選んでいる。耳がちぎれそうに重いイヤリング、洋服を選んでしまう存在感のある派手なネックレス…。草葉の陰で母は呆れているはずだ。そんな娘に育てた覚えはない、と。
ある時、FACETASM の撮影に呼ばれた。カメラマンは奥山由之さんで、スタイリングは(この連載でもお馴染みメンバーの) FACETASM 落合宏理さんとスタッフの方。あらかじめ「大ぶりのアクセサリーがあったら持ってきてください」と言われていたので、適当に見繕って現場に向かった。洋服は FACETASM のパープルの華やかなロングドレスだった。ネックレス、どれを使うのかなあ?と思ったら、その場で私は首に全部盛りにされていた。
え!その発想はなかった!
ただでさえ強烈なアクセ同士、まったくニュアンスの違うものを一緒に纏うことで1つになり、それが FACETASM の世界になる。耳にはボリュームのあるイヤリングを付けて過剰さのバランスを取る。ファッションはバランスが命。さすがだなあ、と感心してしまった。かくして FACETASM の服と私のアクセサリーは見事に融合したのだった。
写真家・映像監督の奥山由之と FACETASM による写真集『TOKYO SEQUENCE』より。2020年から4年間続けたプロジェクトで、東京の街と総勢200名を撮影収録。