国内も海外も仕事で出かけることが増えた。都内にいるときも出演、登壇、取材などの「現場」に足を運ばない日が少ないくらいで、出かける際には、現場で役に立つ七つ道具が入ったパピエティグルのメッシュポーチを鞄に入れておく。使い回しができる指向性耳栓、あぶらとり紙、資生堂のモアリップ、スタジオ収録で下地に使うアンブリオリスのモイスチャークリーム、コンタクトレンズ装着薬、ハンドスプレイに、電気ひげ剃りである。ひげ剃りがとくに必要になってくるのは地方出張でホテルに泊まった翌朝。値段の張るグレードの高いホテルならアメニティも充実していているが、何故かビジネスホテルに限ってアメニティ削減による環境負荷軽減への取組みに一生懸命で、自前の洗面道具を忘れたお客様にはご用意があるの体だったり、セルフチェックイン機付近の棚から適当に掴む流れだったりする。わたくしはひげ自体かなり濃い方なので、そこで提供される使い捨てのカミソリは心許なく、袋に入ってるクリームも泡が立たず、寝る前から肌がヒリヒリする気がする。せめてシェービングフォームだけでも部屋に備え付けてあれば、快適なモーニングルーティンができるというのに。
今年の春、優れものガジェットが手に入ったので、さっそく七つ道具に加えた。ラムダッシュ パームインシェーバーという。「パームイン」という不思議な和製英語だが、読んで字のごとく、丸っとして滑らかな川石のような形をした持ち手のない小型シェーバーである。高速リニアモータで動き、二色あるがわたくしはマーブルホワイトの方を選んだ。手のひらに収まる五枚刃は、ゆっくりとぐるぐる顔の皮膚をなでるように、首や頤下をふくめて綺麗に剃り上げてくれる。USBプラグType C充電対応、付いてくるセミハードケースも同系色系で、どこに置いても静かで美しい佇まいである。自宅でももちろん使っているが、何と言ってもビジネスホテルの朝。洗顔料と水を手のひらでかき混ぜ泡を発生させる「泡メイキングモード」というのがあって、二〇秒で濃厚な泡を立てた後に自動でひげ剃りモードに戻り、たっぷり含んだムース状の石鹸で楽々濃いひげでも剃ってくれて、肌に優しい。使用後は水洗いして蓋を被せたら、ずっと手に持ちたくなるようなグッドデザイン。
11/ 2024