
我が家には9歳の雄猫がいる。名前はSEA(シー)、壮大な名前に似合わずビビりで血の気が多いタイプ。そしてとにかくよく鳴く。朝3時、4時に起こしてきて、私が起きるまで鳴く。外出から帰宅すると駆け寄ってきて鳴きながらどこまでもついてくる。食事中は膝の下で鳴く。上に上がっていいよと言うと、膝の上でまた鳴く。言葉は通じないながらにこの9年でなんとなく思うのが、具体的な食事や遊びの要求というより「こっちを見て」「かまって」と言っているようだ。目力もあるので圧がすごいし声もでかい。でもって、エディ・スリマンばりの頑固さ(作風の話です)で、構うまで鳴き止まない。その証拠に、抱っこしたり、お尻をトントンと叩くと鳴き止む。しかし、構うのをやめると鋭い眼光をこちらに向け、しっぽをブンブン横に振りながらまた鳴き始めるし、片手間に構っていると噛み付いてくる(人間でいうと50代のおっさんですよ。元気ですな)。いつまでもいつまでも構ってほしいようだ。彼以外の猫と暮らした経験がないため、猫なんてこんなものかなと思っていたが、猫のいる友人宅にお邪魔するとみんな揃いも揃って静かであり、ちょっと羨ましいなと思ったりする。しかし9歳になった今、あとどれだけ一緒にいられるのだろうと考えることが増えた。うるさく感じていた鳴き声が生活から消えたとき、私は正気を保てるのだろうか。別の猫と過ごすことになっても、きっとこんな風には鳴かないだろう。この鳴き声を、いつまでもいつまでも愛おしむはずだ。