
東京の街にいると、朝、目が覚めてから、慌ただしく準備をして、忙しなく電車に乗って、アトリエまでの道のりを足早に歩き、仕事が始まる。普段自分がありとあらゆる音に耳を傾けていないことにハッとする時があります。あらゆる音が混ざり合っている東京では、どこにいてもいろんな音がしてくるので、何かに耳を傾けるという感覚が鈍ってしまう気がしています。
ふと、東京を離れて、物理的に仕事場から距離を保ち、自然に身を置いてみると鳥や虫の音が聞こえたり、窓の外からおばあちゃん同士の挨拶が聞こえてきたり、学生たちが鼻歌を歌いながら登校していたり、風の音が聞こえたり、キッチンで料理している音が聞こえてきたり、自然の音も環境音すらも心地よく聞こえてくる感覚が芽生えてくるのです。その感覚ってものすごく大事で、そんな大袈裟なことではないのですが、失われそうなものを取り戻しているそんな感覚になります。
自分にとって自然の中に身を置くこと、都会の喧騒から離れて耳を傾けること、そうゆう時間が自分の感性を研ぎ澄ますのに必要なそんな時間になっています。