
気持ちがいいから繰り返し聞くという意味では、私の場合、ヴィンテージ・スピーカーになる。家では、シャキッとオーバーホールしたJBLの4311Bをターンテーブルとプロジェクターにつないでいるけど、最近、好きが高じてあとさき考えずにALTECのA7という巨大なスピーカーも買ってしまい、とりあえずこれはスタジオ用と考えることにした。
ヴィンテージ・スピーカーの何がいいって、スピーカーから出てくる電気の音がいいのです。もちろん音楽が好きで、だからこそ聴いてるんだけど、あーいま電気が音楽となって乗ってやってきてるな~、電気の音を聴いてるな~と感じる瞬間は、「音楽が好き」というのを超えた体験で、生きててよかったと思う。
最近のハイエンドなスピーカーはそれ自体に電源が付いているものが多いんだけど、そういうのと違って、ヴィンテージ・スピーカーのほとんどは小さな電気信号がアンプで増幅して供給されることで音が聞こえる。それって物理学的に言うと「電気そのままの音」が鳴っているってことだ。それが好きです。
作品にもヴィンテージ・スピーカーを使う機会が増えていて、秋のミラノの現場のために現地調達することになった。スピーカー探しを担当することになった美術館のテクニカル・ディレクターが私同様めちゃめちゃ興奮してたので、電気の音には言語を超えた魅力があるんだなと思った。