最近、妊娠・結婚と自分のなんとなく思い描いていた未来に全く含まれない、計画になかったことを連続で経験して、真っ先に思い返したのがこの本でした。主人公はバツ二で娘のいる作家で、大学生である年下の男の子と恋愛の渦中にいます。日本では長らく、家庭を持つことと恋愛することは一人の中で共存せず、特に女性、母になった者の恋愛は忌避されるような、あってはならないもののように扱われてきたような気がします。でも、母になろうが家族を作ろうが、女性としての身体も生活も続くわけで、それこそが今、たとえば東京のような都会で生きている者のリアルなわけです。恋愛する母、そして家族的な繋がりの多様な在り方を模索するこの本は、きっと私だけでなく、仕事をして、家族を持って、時には母になって、また女として恋愛していく女性たちに、息をする場を与えてくれる気がします。
『デクリネゾン』
金原ひとみ(ホーム社)