「感性の歴史家」ともいわれる A. コルバンが16世紀から20世紀における“身体”の変化を描いた一冊。宗教、医学、強制収容所、エステ……様々なものが発明されるたびに、新たな角度から身体をみつめるまなざしが現れ、そのたびに身体のイメージは変化してきた。この本では時代と共に変化してきた身体のイメージ、時代のまなざしに見合うよう”振る舞い”を強制されてきた身体の歴史が示されている。現代は時=空間の断裂、速いスピード、大量の情報などの影響で、心身同一性の希薄化が問題視される時代であるが、このような状況の中、我々は身体をどのように見ているだろうか。整形やジムの流行からは身体に手を加えることで心身の同一性を保とうとする様子もみえてくる。いま身体は心身の結び目として重要な役割を期待されているのかもしれない。様々な時代によって変化してきた身体を想像しながら、同時に、そのどの時代をも生き延びた自由な身体を想像する。だれの目も気にせず、常識にとらわれず、のびのびと生きた身体。踊っていると、筋収縮や重力のなかに、遠い昔から伝わってきた身体を感じることがある。長い時の流れの一地点に自分が位置すると実感することは、私を自由にしてくれる。この本はわたしを自由にしてくれた本です。
『身体の歴史Ⅰ Ⅱ Ⅲ』
A.コルバン / J-J・クルティーヌ / G・ヴィガレロ監修(藤原書店)