小学生の頃、そこそこ勉強ができて、足が速くて、背が高かった。でももっと賢いやつがいた。速いやつが、デカいやつがいた。何か一つに突き抜けられてない自分のことを好きになれなかった。そんな時、本書に出会った。見たことも聞いたこともないアメリカンフットボールが題材の漫画。
私を夢中にしたのは超スピードを武器にフィールドを駆け抜ける主人公、ではなく頭脳を駆使してチームを率いるキャプテン・ヒル魔妖一だった。
それまで私が通ってきたスポーツ漫画の爽やかなイメージを覆す勝利への貪欲さを持ち、相手を、時には味方すらも欺く司令塔。
しかしその全ては彼ら「弱小校=持たざる者」が、他の「強豪校=持つ者」に勝つための努力。
「ないもんねだりしてるほどヒマじゃねえ、あるもんで最強の闘い方探ってくんだよ 一生な」という彼の言葉は、早めのモラトリアム中だった小学生の私を奮い立たせた。
そこから自分を見つめ直し、勉学を磨いた。お年玉を貯めて中学受験をした。
地元を離れ、ヒル魔のようにゼロからアメフト部を立ち上げようと入った学校ではラグビーが非常に盛んだった。心が折れた。
『アイシールド21』
原作:稲垣理一郎、漫画:村田雄介(集英社)