17歳の誕生日に贈ってもらった『ゲド戦記』をずっと大切に持っている。
私の人生の第二の母でもありおねえちゃんでもあり親友でもある大切な人か
らもらった本だ。
年頃になってもらうプレゼントで本を選ぶ人は他にいなかったから、その時
のことをよく覚えている。これはきっととても大切な本なんだろうな、と
思った。
小学3年生ごろに肺炎で入院したのがきっかけで、読書を好むようになっ
た。シンドバッドの冒険とロビンソン・クルーソー、プー横丁にたった家の
3冊を夢中になって読んだ。それまでも寝る前に読んでもらった絵本や冒険
譚を好んでいたけれど、この時よりいっそう、未知の世界に入ってくことを
好きになった。
本は私を置き去りにしないし、いつでも手に取れば変わらず私を受け入れて
見たことのない広い世界に連れて行ってくれる。だからなのか、私は大人に
なった今でもファンタジーを好むしSFの世界が大好きである。
『ゲド戦記』は私が人生で度々読み返す本である。私自身を振り返り、見つ
め直すための人生の一冊だ。ル・グウィンの紡ぐ、生きるということ、人間
であることへの真剣な問いかけがとても好きだ。
私はファンタジーやSFを人間の根本を問い、その複雑さについて紐解いてい
くジャンルだと思っている。世界に問いかけ、自分に問いかけ、人生の冒険
をより愉快に思わせてくれ、知るということを恐れず楽しいことだと教えて
くれる。私と一緒に戦ってくれる味方でもある。
きっとこの先も私の旅を共に歩んでくれる大切な友人のように思う一冊であ
る。
『影との戦い ゲド戦記 I』
アーシュラ・K.ル=グウィン(岩波書店)