岡﨑乾二郎さんは、私にとってコーチのような人だ。
いまから15年以上前、私が美大の大学院を卒業して、駆け出しの美術家だった頃。岡﨑さんが主宰していた私塾というのかクラブ活動というのか、に出入りして、そこで私は、美術家は科学的かつ実験的であるべきだということを彼から教わった。正確には「1回きりじゃなくて100回実験を繰り返せば、それは必ずや作品になる」と。
具体的な作品が完成することの喜びとは違って、実験の場合、プロセスの中でつかんだりつかみあぐねたりしながら、その先に何が立ち現れるのかを想像するわくわく感でドライブしていく。これこそがまさにクリエイティビティなのだと気づくのは、まだしばらくあとのことだ。
まだ誰も見たことのない実験結果を生み出すための装置として、そのとき岡﨑さんはこっくりさんにドローイングを描かせ(その結実は『感覚のエデン』所収の「生きたアーカイブ」を読んでください)、私はバナナに電極を刺してその抵抗値を測定した。
『感覚のエデン』
『而今而後――批評のあとさき』
岡﨑乾二郎(いずれも亜紀書房)