こころに残っている本のひとつは、『モロッコオンザロード』です。ロバート・ハリスさんの存在を知り、学生時代バックパック旅をしながら彼の本をよく読んでいました。1960年代のジャック・ケルアックのビートニクの生き方のカッコよさを当時の先輩たちに教えてもらったのですが、どこか実感がない中で、ロバート・ハリスさんの旅行記に親近感を覚え、ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』のモロッコ版?という勝手な解釈のもと読み進め、ストーリーのワクワクさに心が持ってかれ、妻との婚前旅行にはモロッコに行こう!と決めたほどでした。古都マラケシュのまるで迷路のような喧噪感、ドラクエのトルネコが出てきそうなワクワク感、East meets west を知ったかになったような異国情緒感。道なき道をジープで走り、禁酒法時代のようなガソリンスタンドの地下に秘密裏に山積されたビールの無数のケースを見たときの見てはいけないものを見てしまったドキドキと、荒れたオフロードから突如としてはじまる光輝くサハラ砂漠のはじまりを見たときに、はじめて海を見た人はこんな気持ちなのだろうな、と心が揺さぶられました。砂漠のオアシスを目指し三日三晩ラクダに揺られ共に過ごし、深夜の月明りだけで『モロッコ オン ザロード』を読み返したことは忘れられません。旅をしたい心がくすぐられ、サハラ砂漠の月明りでまた読みたいと思う一冊です。
『モロッコ オン ザロード』
ロバート・ハリス(東京書籍)