
数年前の私は散々世界中を飛び回り、飽きてしまうほど旅をしていた。地球を何周もしながら、新しい世界を見せてもらい、新しい自分と出会う。目が回るほど激しい毎日を送っていた当時の口癖は「日常が欲しい!」だった。そんな私も3年前に出産し、念願の日常をゲット。皿を洗い、スーパーで子と喧嘩をし、近所の人と立ち話する日々。落ち着いた日々のなかで時間が積み重なっていく喜び。だけど……ずっと同じ環境・同じ役割を生きることに違和感がでてくることもある。とはいえ実際には、一人で遠くへ出かけても家族のことを考えてしまい「日常を忘れる旅」にならない……むしろ離れると会いたくて会いたくて……。はい、それでは、そんな私が最近した「日常を忘れる旅」をご紹介します。家の角を曲がって普段なかなか行かない裏庭で草を抜く旅です。プチプチ草を抜いているうちに、どこかにトリップして、親という役割も脱げ、名もないただの私になります。今の私には新しい場所で新しい自分に出会うよりも、ただの私がそこにいるということを感じられる、このくらいの旅がちょうどいいみたいです。