2019年の1月にニューヨークに行った。身動きのとれない閉じ込められた空間が苦手な閉所恐怖症持ちなので、初めての長時間フライトで心身は疲れ果てていた。宿の周辺に到着し、ファサードに惹かれて入ったのはビーガン料理の店だった。店内には様々な肌の色や顔つきの人達がいて、蛍光色のダウンジャケットを着た人種も性別も不明なブレイズヘアーのお客さんがソファに深く腰かけていたのが印象に残っている。肉々しいビーンズと濃い味付けが、ビーガン料理に対する固定概念を壊してくれた。店内では、velvet undergroundの曲が流れていた。初めての本場ニューヨークを感じるに相応しい店だった。美術館もいくつか見たが、街中に溶け込むアートギャラリーが面白くてたくさん周った。建物内部に剥き出した既存の壁と大きくて真っ白な造作の壁、手を入れている部分と入れていない部分のメリハリ、どこまで計算されているか分からない雑多と洗練が同居している広々とした空間に、インディペンデントな精神を保ち続けながらもハイからローまであらゆるフィールドを平然と行き来する姿勢に格好良さを感じていた。タイムズスクエアでは、高層ビルの角に沿って滑らかにカーブしている巨大モニターに世界的企業の広告CMが流れていた。ここが世界経済の中心だと叫ばんばかりのパワーに圧倒された。先鋭的な価値観やチャレンジを受け入れるチャーミングさがありながらも、緩みのないプライドとポリシーを持っている街。またいつか訪れる時も、ニューヨークは自由で刺激的な街であってほしいなと思ったが、その時は長時間フライトに耐えれるように誰かと一緒に行こうとも思った。
10/ 2024