
小学校の頃、同級生たちが秘密基地を作っているという噂が立った。
学区内にあるどこかの公園の隅に作っているらしい。
自分とはあまり関わりのない子たちだったので、
「よくないよねえ」「いけないよねえ」なんて仲良したちとひそひそ話したが、
内心、秘密基地を作るその子たちが大人の階段を登っている感じがして、すこし焦っていたのだと思う。
秘密基地メンバーはただ仲のいい子達が集まっているのではなくて、ひとつのグループを軸に、色んなグループの子が入っていたのも気になった。
なんとなくだけれど、私は選ばれなかったんだな、ということも感じていた。
羨ましさとか、子どもなりの嫉妬心で、仲間に入れてとは言えなかった。
それでも、どんなものを作っているのかどうしても気になって、メンバーの一人に頼み、連れて行ってもらった。
見るだけだよ、と釘を刺されながら自転車に乗って、ペースの早いその子を必死に追いかけた。
着いてみると、寄り添い立つ木と木の間にダンポールが重ねられて、
ガムテープで括り付けられていた。
子供が二人も乗れば落ちてしまいそうな脆さだった。
アニメなどの影響か、もっとすごいものを想像していた私はちょっとがっかりしながら「かっこいいね」と伝えた。
数日後、台風でダンボールが崩れ落ちたらしいとクラスメイトから聞き、その翌日に地域の方が片付けているところに出会したが、撤収作業には秘密基地メンバーの子は一人もいなくて、むしろそうでない私のような子供が何人か、片付けられていく様子を見つめていた。
今思えば、数人のメンバー全員があの上に登れたわけでもないだろうし、そこでゆっくりしたいということもなく“あそこにみんなで秘密基地を作っている”ということが重要だったのだろうなと思う。
それぞれ家でもいろいろあるんだろうし、学校でもいろいろあるんだろうし。
大人が思うよりずっと、小学生は大人だし、たいへんなこともたくさんある。
何かあったら逃げ出せる場所というものを自分たちで作ったということが、心の支柱になっていたのだろうなと今さら心を寄せた。