
私には歳がふたつ離れた姉がいる。一緒に住んでいるときは喧嘩ばかりしていたが、それぞれが実家を出て、自分で生活をするようになってからは、支え合うようになった。今ではもはや親友である。
奈良に住んでいたときは、東京に行く際は泊めてもらっていたし、酔っ払って明け方に帰ることがあっても鍵を開けて待っていてくれた。東京に戻ってきてからは、アトリエと姉の家の中間地点に自分の家を借りた。
くたくたに疲れて何もしたくなくなったときは姉の家にいき、ただただ床に寝転がって、姉がごはんをつくってくれるのを待っている。食べさせてもらったあとは、姉と姉の夫がキッチンで会話してるのを耳を澄ませながら寝そべって聞いている。遠のく意識の向こうで「あ、ゆみもう寝たね?」「え?少し足動いてるよ」「まだ起きてるのかな」「もう少し寝かせとこ」。そんな会話を少し離れた部屋で耳を傾ける時間。身体が少しずつゆるんでいく。疲れがとれる。放っておいてくれる。一緒にドラマをみる。お茶を飲む。なんでもないことを話す。みんなで笑う。文鳥も鳴いている。
わたしにとって秘密の隠れ家だ。
この先親を見送るときが来るだろう。一人ではとてもじゃないが耐えきれないから、姉がこの世にいてくれてよかった。