
先月、とあるダンスフェスティバルで、アヤワスカ体験をもとにしたと思われる振付作品を見た。グロテスクとも取れる動きが続くその踊りには、どこか異界に通じるものを感じた。
アヤワスカはアマゾンの植物から作られる強力な幻覚剤で、古代より先住民たちはそれをシャーマニズムの儀式や民間療法として用いてきた。現在ではヨーロッパでも、心理療法やスピリチュアルなセッションの一部として、その価値が再発見されている。
一昨年、私はペルーのアマゾン川上流域を旅した。ジャングルの中に建つロッジの奥に設けられた、錠のかかった広く静かな木の部屋。そこは確かにアヤワスカ儀式のための「秘密の場所」だった。だが私は、その場所に身を預ける準備ができていなかった。肉や酒を絶ち、心身を浄化し、シャーマンとともに自分の内側へ深く降りていくーその10日間のプロセスを経る時間的な余裕がなかった私は、結局その儀式を経験せずに立ち去ることになった。
だから私にとってその部屋は、「秘密の場所」となり得なかった空間として、今も心に残っている。
足を踏み入れたけれど、扉が開かれなかった場所。潜り抜けなかった時間を想う。