
私は喫茶店が好きだ。一人にもなれるし、連れと行っても会話に没頭できる。昔ながらの純喫茶も好きだし、旅行先では、地元の匂いが充満してそうな喫茶店をグーグルマップ上で嗅ぎ分けて入店するのが、一つの楽しみだ。開業時の時代背景、働く人の趣味やこだわり、日々のほころびが合わさって、それぞれのお店から個性が染み出す。そして、そんなオルタナティブなお店とは真逆の、チェーン展開の喫茶店も同じくらい好きだ。休みの日の空いたスキマ時間、仕事の合間に現場から離れてリセットしたいときも、気づけば足はチェーンの喫茶店へ向かっている。本を読んだり、日記を書いたり、考えごとをしたり、このコラムの原稿もここで書いている。喫茶店で生まれたアイデアは数えきれない。私はタバコを吸うので、ガラスで仕切られた狭い喫煙ルームで一息つきながら店内を眺める。勉強に励む学生、ノートパソコンを広げるサラリーマン、会話を楽しむ年配の方など、色んな人たちが、一旦、という感じで過ごしている。どの街にもあって、朝早くから夜遅くまで営業し、何時間いても咎められないし、何度訪れてもいい。そんな無言の受け入れに、自分が透明人間になったような気分になる。甘えすぎは良くないのでコーヒーを追加するが、カフェインの過剰摂取でお腹が痛くなっても綺麗なトイレがある。均一化されたサービスと一人一席の自由空間の中で、シェアと放置が不思議な距離間で佇む。誰もが知ってる多店舗チェーンでも、私にとっては貴重な秘密の場所。ちなみにベローチェさん推しです。