違う人生ってなんだろうと思って、想像してみたのだけれど。
子役として事務所に入る機会がなかったら俳優という道は考えなかったのではないかと今は思う。
仕事が違ってもまあ、私は私のままだろう。
だとすると、私にとって全く違う人生はたぶん、自然に囲まれて暮らしていたら。
裸足で川遊びをして季節毎に変わる水の冷たさを知っていたら。
緑から紅葉に変わる山々をじっくり眺めていたら。
通学のためのバスが1時間に1本だったら。
それは確実に違う人生だったろうと思う。
しかし私は長い間、俳優という道以外なかったと話していたし、
自分でもそうに違いないと思っていた。
今思うとそれは、芸能界行きの電車から降ろされないように
私の向かう先はこちらしかありませんと、見えない車掌に伝えていたのではないか。
当時の気持ちは今や、被せることしかできないけれど。