11/ 2025

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  • 関祐介 デザイナー
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  • 中島敏子 編集者

    吉田松陰になりたい

    もし今と違う人生を送っていたら?
    私は吉田松陰になって彼の生涯をちょっとだけ修正したい。というのは、こう見えて、実はワタクシ吉田松陰の末裔なのである。ガチです。彼には実子がいなかったので、妹の直系が吉田松陰の末裔ということになっている。楫取元彦という後の初の群馬県令になった人が松陰の妹と結婚していて、母方(楫取姓)のご先祖なんである。
    NHK の大河「花燃ゆ」が始まった時は、キターッ!と親戚一同盛り上がったが、視聴率が低く話題にならず、そのうち皆忘れてしまった…。
    吉田松陰は確かに歴史上の偉人であり、その功績は偉大である。しかしお騒がせのヤラカシ人生でもあった。私だったら「それはやめとけ」と思うことがたくさんある。数々の「どーかしてる」行動を次の転生ではぜひ私が改めたいと思う。

    たとえば若き日に彼は友人と東北旅行を計画した時、友人との約束を守るため、長州藩からの通行手形の発行を待たずに「脱藩」してまで出発してしまった。たしかに大変有意義な旅行ではあったが、結局、罪に問われてあっさり士籍(武士の身分)を剥奪され、世禄も没収されるのだ。えーーっ!

    有名なやらかしは、ペリー艦隊の船舶が停泊してる下田に行き、そのへんの小舟を盗んで漕ぎ寄せてこっそり船艦に乗船、突然「海外に連れてってくれ!」と直訴した件。ペリーもびっくり。普通に渡航は拒否され、伝馬町の牢屋敷に投獄されたのだ。えーーっ!
    幕府による厳格な鎖国に対して、日本の発展のためには西洋の文明を学ぶべき!という思いはわかるが、だからといって密航しちゃダメ、絶対。
    この時「ヤツを死罪にしろ!」という声もあったほどだが、こういう時必ず周囲のシンパが助けてくれる。萩に移されて獄屋敷に幽霊され、1年間で600冊の本を読んだとか。速読かしら。そして監禁中に囚人たちのために講義を行い、それがのちの「講孟余話」(松陰の人生観や国家論、教育思想をまとめた著名な本)になるのだ。偉いんだけどね。

    最終的には29歳の若さで獄中で死刑になるのだが、幕府の尊王攘夷に違を唱え、日米修好通商条約を勝手に締結したと激怒して、弟子を募って武器弾薬を用意して時の老中の暗殺を企てた。弟子たちも友人たちも「やめとけ!の大合唱。にもかかわらずトーバクトーバク(倒幕)言うてるのでさすがに幕府に睨まれる。そしていよいよ井伊直弼による反幕府派の弾圧「安政の大獄」で取調べを受ける。この時、(誘導尋問だったらしいが)松陰は老中暗殺の計画をうっかり告白しちゃったのである。えーーっ!!!
    「話せばきっとわかってくれる」との読みが裏目に出て大失敗、あっさり死刑宣告だ。そんな処刑の前日、松陰は遺書というべき「留魂録」を書き上げ、弟子たちに思いを託した。

    このように吉田松陰とは最期まで「な、なんでまた…」の連続人生である。しかし松下村塾で学んだ弟子たち(高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋…)は日本の幕開けと発展に寄与した重要人物ばかり。教育者として大変優れていたのだ。特に私が好きなのは、松陰が自分を「拙者」ではなく「僕」と呼び、弟子を「○○君」と呼んでいたこと。これは師弟の身分に関係なく平等な人間関係の重要性を表す。「君付け」は後に国会でも通例となり、今やジャニーズでも、裏腹ストリートカルチャーでも君付けがデフォルトだ。
    ご先祖さま、えらい。