小さい頃から、家には日本のものはもちろん、さまざまな国や時代のうつわがあり、うつわはとても身近な存在でした。
私は、いろいろな土地を旅することが多いのですが、旅先では必ずと言っていいほど、その土地のうつわを見に行きます。
うつわには、その土地の文化や歴史、そこで暮らす人たちの感覚まで内包されているように思います。だから、うつわを見ることは、その場所を知る楽しみのひとつ。スーツケースに余裕がある限り、気に入ったものをひとつ、ふたつと持ち帰ります。
写真のひまわりの水注は、南仏を旅したときに出会ったもの。隣のレモンを盛ったボウルは、メキシコの伝統的な軟質陶器です。少し柔らかな土の表情が残る素朴さが気に入っています。
そして、私は料理をすることも大好きです。
今夜は何を作ろうかと考えるのと同時に、出来上がった料理をどのうつわに盛ろうか、どんなうつわと組み合わせてテーブルを作ろうか、と考えます。
国や時代にとらわれず、自分なりに自由に「取り合わせ」て使っています。
“Vessel”という言葉には、何かを受け止め、内包するという意味があります。私はうつわを見ていると、そこに盛られる料理だけでなく、その土地の文化や旅の記憶、誰かと一緒に過ごした時間まで包み込んでくれるような気がします。
自宅のキッチンでうつわを眺めていると、そのひとつひとつを通して、これまで旅してきた街の景色や、そこで出会った人たち、その時に過ごした時間まで蘇ってくることがあります。
そこに料理を盛り、自分の感性で自由に組み合わせて、大切な人たちと食卓を囲んで、その時間を分かち合う。
そんなふうに、うつわを通して記憶や時間が重なり、食卓に新しい彩りが生まれていくことが、私がうつわを好きな理由なのだと思います。