イラストはチャッピー作
私の食器は行く先々で突発的に買ったものなのでバラバラもいいとこ。スプーンからヤカンまで同じ種類のものはほぼ揃ってない。1人の人間が選んだという“雰囲気”だけ微かに感じられる気もしないでもない。
強いて言うならいま話題のARAS (エイラス)にはまりつつあるのが自分では怖い。
「絶対割れなくてとても軽くて電子レンジ対応」という食器のシリーズ。じわじわと我が家に侵食してきている。この便利さの誘惑に、果たして今後自分の趣味を守ることはできるのか。シリーズ全部揃えてしまいそうな…こ、怖い。今までちまちま買ってきた長い付き合いの食器たちを全部まとめて捨ててしまう日が来るかもしれない。
つまりそれほど食器に対する執着は薄くてテキトーな私だが、子供の頃に猛烈に愛した食器が1つだけある。うちは古い昭和の家なので和食が基本の食卓だった。ある日、親と行ったレストランでカレーを頼んだ時に目が釘付けになった。
突然!なんか、アブラカタブラなヤツが出てきた!
シルバーに輝くカレーのルーを入れる「ソースポット」である。
おまけに!スプーンの形が、なんか、へんてこなひしゃく型!
ポットから少しずつカレーのルーを取り分ける「ソースレードル」である。
カレーなんてどうでもよくなった。とにかくこの魔法のランプが欲しい!絶対欲しい!珍しくおねだりして、その年の誕生日プレゼントに、シルバーのセットをしっかり買ってもらった。
うちは父母と祖父母の他に下宿人さんが4~5人いる大家族だったので、ちびっこの私は忘れられがちで、大人の勢いに負けて食いっぱぐれないように、生存競争激しい熾烈な食卓で日々ひとりで格闘していた。
しかしカレーの日だけは、自分1人だけピカピカのシルバーの食器を取り出して、
自分のためだけにカレーを取り分けながら、優雅なアラブの女王様のようにゆっくりゆっくり食べるのであった。