朝の喫茶店に座っている時間は好きだ。
まだ完全に起きていない人たちが、新聞を読んだり、トーストを食べたり、コーヒーを飲んだりしている。
誰もはっきり急いではいないのに、町だけが少しずつ動き出している。
椅子に座ってコーヒーを待つ。
店の中では、皿が重なり、誰かの椅子が床をこする。
厨房の奥から湯気の音がして、低い声の会話が少しだけ残る。
そのどれもが、朝を始めるためというより、朝に慣れるための音のように聞こえる。
いれたてのコーヒーをひと口飲む。
苦味と酸味が入ってくる。
体の輪郭が少しだけはっきりする。
窓の外が明るくなる。
カップが小さく鳴る。
目は覚めているのに、気持ちだけがゆっくりほどけていく。
何かを始めるでもなくただ少しずつ深くなる朝の中に、わたしも身を沈めていく。