私は先日、親知らずを抜いた。
横向きに生えていたが、先生の腕が良かったお陰で、施術は思っていたよりもあっさりと終わった。
ただ、麻酔が切れたあとも、何日かずっと頭がぼーっとするような、不思議な感覚が続いた。
その間、ふと“親知らず”という名前について考えた。
正式名称は、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)と言うらしい。
急に無機質で、味気ない名前になる。
“親知らず”
親を知らない歯なのか。
親が知らない歯なのか。
ずっと埋まったまま、表に出てこないこともある。
その歯を自分の子どもに見立ててみた。
“親(自分)の知らないところで育っていく歯”
実際には、諸説あるようだが、永久歯がほぼ生え揃う15歳頃よりもずっと遅く、親がその存在を知らない年齢になってから生えてくるため、“親知らず”と呼ばれるようになったらしい。
昔は今よりも平均寿命が短く、生える頃にはすでに親が亡くなっていた、という説もあるようだ。
妙に詩的で、少し哀しい意味でもあったのか。
ただ、普段、当たり前のように使っている言葉なのに、改めて向き合ってみると、不思議な愛おしさを感じて少しクスッとする。
きっと日常には、そういう言葉がたくさん転がっているんだろうな。