突然口の中の歯がグラグラし始め、全部の歯が次々と抜け落ちてしまう、というのは私の悪夢の定番のひとつで、翌日は決まって嫌な気分のまま目を覚ます。
歯が悪い、というのは昨今、中流階級、ネグレクト、ストレス、喫煙などと結び付けられており、不安定な生活やメンタルの文脈で捉えられることが多い。老いの印としても、人間としてのパワーを失った記号としても解釈されている。
というわけで現代人は、歯のケアに余念がない。
歯を操作する、という矯正の歴史は実は古く、古代ローマにも歯を動かそうとした記録があるそうだ。だが私たちがよく知る一般的な歯列矯正は、1950〜70年代、アメリカのテレビや写真文化とともに急速に広まった。白く整った歯は、アメリカの最もよく売れた「輸出品」である – 健康的で幸福な中産階級ファミリー – の象徴となり、その価値観は1980年代以降ヨーロッパにも広がっていった。オランダでは、うちの子どもたちがまだ小さかった1990年代にはすでに、矯正は保険でカバーされる常識になっていた。
最近では、ボトックスやレーザー治療の代わりに、歯にお金をかけることが新しい美容トレンドになっているらしい。
可愛い八重歯や、おはぐろの歴史は、もうしばらくリバイバルしそうにない。