6/ 2026

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    我、二刀流にてかく戦えり

    イラストはチャッピーさん

    歯に関する私の話は長い。
    そもそも顎が小さくて全部の歯が生え切らなかったので小学校の頃に1日に3本、2日続けて6本も罪もない歯が抜かれるという、昭和の高齢歯医者ならではの前近代的で暴力的な治療を受けたのでそれ以来、歯医者はずっとトラウマである。ちなみに親知らずは今も残ったままだ。

    中学時代。虫歯になってもギリギリまで我慢する癖がついた。ある日、友人が学校の帰りに家に遊びに来て一緒にテレビで「ぎんざNOW!」を見ていた時だ。突然激痛が走り、私は思わずこたつにうっぷしてしまった。顔を横にして何か冷たいものをとテーブルの急須を顎に当てながら、痛みに耐えていた。しばらく喋ることもできなかったので、友人がふと振り向いて「え!なにしてるの?」と大声を出すから、シーッ!歯が痛くて…と言ったら、自分でも「急須と私」の状態がおかしくてたまらず、痛みを堪えながらもしばらく友人と笑い転げていた。

    大学時代。常にどこかに C4の爆弾を抱えた生活で、思い切って行った病院の施術がもう痛くて痛くて痛くて。
    ふらふらになって診療台から降りた瞬間、くらっとして意識が遠のいた。痛みで気絶したのだった。目を開けると顔の上に心配そうな顔が2つ3つ見えた。

    我慢していればきっと、自分の虫歯より技術の進歩が追い越してくれて、素晴らしい治療法が見つかるに違いない、と信じて私の歯医者嫌いは大人になるまで続いていた。1回行ってイヤになり、忘れた頃にまた次のとこに行ってはイヤになる。これを繰り返して何十年も経った。

    会社を辞めてようやく気がついた。このままじゃ絶対絶命な領域に入ってしまう。一念発起して、金に糸目はつけず、とにかく最高のインプラントにしようと思いたった。探しに探して名医とおぼしき青山の歯医者に通うことになるのだが、名医過ぎてゴールの設定が非常に高い。というかそれだけ酷い状態だったわけだが。「中村アンになりたいわけじゃないんです。ともさかりえでいいんです(←失礼!)」と言ってみたが、そもそもかなり複雑で難しい状態のため、名医は知り合いの他の名医たちに相談した。青山、池袋、千葉、静岡、アーカンソン州(!)という遠方からも招集されたレジェンドたちが、何回か私のレントゲン写真を見ながら zoom 会議を行った。アベンジャーズである。いろんな専門分野の権威たちがああでもないこうでもない、と私の口の中について議論した。成功したら学会で発表するレベルの難易度らしい。その結果、これが最良と言われる治療方針が出されたのだが、なんと高級外車1台分だった…。しかし時短で結果は出るという。さすがに日和ったが、実際に始めてみないと最終的な金額はわからない、と言われて治療がスタートした。

    そして今は…結局、人生何度目かの挫折でまた途中下車しまった私である。インプラント2箇所入れたあとに、今度は大学病院で顎を切ってずらして戻すという手術が必要になり、2週間の入院、2、3ヶ月のダウンタイム、そしてひょっとするとエラが張り、鼻が上向き、鼻の穴が広がる可能性がある…つまり、下ぶくれになりブタ鼻になるということ?…聞いたとたん、脱兎のごとく逃げ出したのだった。可能性があるだけだけど、まさかそんな大金かけて顔面崩壊なんて!(←おおげさです)。

    というわけで、現在はごく普通の街の雑居ビルの歯医者に地味に通っている。時間はかかるが地道に矯正から始めている。

    ようやく口腔ケアの話だ。すっかり心を入れ替えて、歯磨きは生活の中で大事な時間になった。歯ブラシは「奇跡の歯ブラシ」という名前の独自のピラミッド形でなぞるだけで汚れが落ちるという話題の商品。なぜか製造・企画が AbemaTV で、Abema の「通販の虎」という番組で量産化が決まったものらしい。山型カットで歯間まで届く感じがある。山型最高!しかし、歯ブラシの後で私はさらに Panasonic の超音波水流でしっかり洗浄 ジェットウォッシャー 「ドルツ」を使う。水流最高!

    この2度磨きに意味があるかどうかはわからない。しかしこの二刀流にて背水の陣で私は戦っている。